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2022/11/16

最近読んだ

大江健三郎 奇妙な仕事(『見るまえに跳べ』新潮文庫、所収)

附属病院の前の広い鋪道を時計台へ向って歩いて行くと急に視界の展ける十字路で、若い街路樹のしなやかな梢の連りの向うに建築中の建物の鉄骨がぎしぎし空に突きたっているあたりから数知れない犬の吠え声が聞えてきた。

 

金井美恵子 愛の生活(『愛の生活 森のメリュジーヌ講談社文芸文庫、所収)

書クコトなんて、反社会的で隠微で……頭をかくのとは違うんだからな、恥じなくてはいけません。

 

田中小実昌 『ポロポロ』中公文庫

みんな、言葉にはならないことを、さけんだり、つぶやいたりしてるのだ。それは、異言というようなものだろう。使徒行伝の二章にも、異言という訳語は見えないが、そういったことが書いてある。使徒たちが、自分がいったこともない遠い国の言語でかたりだしたというのだ。こんなふうに、記されたことでは、異言には、こういう意味があったというような場合が、それこそ記されてるが、実際には、異言は、口ばしってる本人にも他人にも、わけのわからないのがふつうではないか。うちの教会のひとは、異言という言葉さえもつかわなかった。ただ、ポロポロ、やってるのだ。

 

神林長平 『狐と踊れ』ハヤカワ文庫JA、所収)

踊っているのでないのなら 踊らされているのだろうさ